COSMOS(コスモス)プロジェクトについて


 COSMOS(Cosmic Evolution Survey:宇宙進化サーベイ)はハッブル宇宙望遠鏡 (以下ではHSTと略す)のトレジャリー(基幹)・プログラムであり、HST史上、 最大の観測プロジェクトです。
 宇宙には銀河の個数密度が高い場所や低い場所があり、宇宙の大規模構造と 呼ばれています(図3)。銀河はなぜこのような大規模構造をトレースするように 生まれ、進化してきたのか大きな謎と考えられてきた。1980年代には、宇宙の 大規模構造は私たちの知っている物質ではなく、暗黒物質(以下では、ダークマター という用語を使う)と呼ばれる物質が重力的に凝集して出来たのではないかと 考えられるようになりました。すなわち、ダークマターが宇宙の大規模構造を作り、 その中で銀河が生まれ、進化してきたというシナリオです(ダークマター・シナリオ)。
 COSMOSの研究テーマは、まさに銀河やダークマターが宇宙の大規模構造とどのように 関連して進化してきたかを調べることです。そのために、2平方度の広さの天域を HSTの高性能サーベイカメラACS(Advanced Camera for Surveys)とすばる望遠鏡の 主焦点広視野カメラSuprime-Cam(シュプリーム・カム)を用いて、可視光帯全域に 及ぶ撮像観測を行いました。さらに、X線、紫外線、赤外線、電波の全波長帯に及ぶ 観測を行ってきており、HSTやすばる望遠鏡のデータと合わせて調べることで、 120万個の銀河における星生成の歴史や、銀河の中心になる巨大ブラックホールの 進化を調べることができます。そして、今回のプレス・リリースでおわかりのように、 ダークマターの進化も調べることができます。このようにCOSMOSは、銀河進化のみならず、 宇宙進化の全てが手に取るようにわかる、一大プロジェクトと言ってよいでしょう。
 COSMOSプロジェクトの正式メンバーは世界各国から集められた39名の研究者 です。但し、39名の研究者の共同研究者がいるので、実際には約70名の研究者 が COSMOS プロジェクトに携わっています。プロジェクトの研究代表者は ニック・スコビル博士(カリフォルニア工科大学・教授)。日本からは谷口義明 (愛媛大学)が正式メンバーとして参加しています。すばる望遠鏡による COSMOSの観測は、谷口義明が研究代表者で、全部で約30晩の観測時間がCOSMOSの 観測に投入されました。

COSMOS プロジェクトの公式 WEB
http://www.astro.caltech.edu/~cosmos/

COSMOS 天域のすばる望遠鏡の観測による成果
「50万光年に渡って伸びた星の帯
− すばる望遠鏡、大銀河に壊される矮小銀河を発見」
http://www.astr.tohoku.ac.jp/%7Esasaki/thresh.html



図3:スローン・デジタル・スカイ・サーベイの観測で調べられた宇宙の 大規模構造。一つの点が一個の銀河を表している。天の川銀河は中心に位置する。 円の半径は858Mpc(メガパーセク)[約28億光年の距離に相当]。 銀河の空間分布は泡状の構造を示す。 (Gott et al. 2005, ApJ, 624, 463)