銀河の距離の決め方


 銀河の距離を決めるには赤方偏移と呼ばれる量を測定する必要があります。 宇宙膨張の効果で、それぞれの銀河が遠ざかるように観測されますが(ドップラー 効果)、遠方の銀河ほどその影響が大きくなります。遠ざかる度合いが赤方偏移 という量に反映され、zという記号で表します。zが測定できると、宇宙モデル を介して、その銀河までの距離が決まります。ここでは、宇宙モデルとしては 最新の宇宙マイクロ波背景放射の観測(WMAP)で得られたものを採用します。
 赤方偏移を決めるには、普通は銀河のスペクトル観測を行います。ある スペクトル線が宇宙膨張の影響でどれだけ長波長側(すなわち、赤い側)に ずれたかを測定すれば、赤方偏移が測れます。しかし、多数の暗い銀河の スペクトル観測を行うのは非常に大変な観測になります。そこで、私たちは 銀河の測光的な特徴を調べることで、赤方偏移を測定しました。今回の弱い 重力レンズの解析には、十分な精度で100万個を超える銀河の赤方偏移を決定 することができました。すばる望遠鏡の高性能が発揮された、非常によい例 になりました。


図8 測光的赤方偏移の解説図。例として、 25億光年、50億光年、75億光年の距離にある 楕円銀河のスペクトルがどのように観測されるかを、 上方に実線で示しました。 距離が遠くなるにつれて、青い(短い)波長の側で 暗くなっていくことがわかります。 すばる望遠鏡では可視光帯のBバンド(440ナノメートル) からz’バンド(900ナノメートル)帯[透過曲線が下に点線で 示してあります]で銀河の明るさを測るので、 銀河の距離が測定できます。