宇宙大規模構造進化研究部門│愛媛大学 宇宙進化研究センター

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鍛冶澤賢助教が参加している共同研究がプレスリリースで紹介されました

 

すばる望遠鏡を用いた最新成果を集めた 日本天文学会欧文研究報告「すばる望遠鏡特集号」 について、すばる望遠鏡からプレスリリースされ、 その中で鍛冶澤賢助教が参加している研究の成果が 紹介されています。 詳細は以下のリンクからご覧になれます。


すばる望遠鏡の最新成果が勢ぞろい 〜 日本天文学会欧文研究報告「すばる望遠鏡特集号」が刊行
「すばる望遠鏡/MOIRCS による近赤外線深宇宙探査」
「銀河における少子高齢化はいつどこで始まったのか?」
(国立天文台プレスリリース)


『銀河における少子高齢化の謎に迫る』

概要


現在の宇宙では、非常に規模の大きな銀河では新しく星が生まれることは稀で、 星の高齢化が進んでいるのに対して、小さな銀河では活発に新たな星が生まれている ことが多く、若い星の割合が比較的高いことが知られています。 このような銀河の規模 (質量) によって、星の年齢分布が異なってくるのは いつからなのか、またなぜそうなったのかという謎に迫るためには、遠くの銀河を 観測することによって、星が新たに生まれなくなり星の少子化が始まっている銀河と、 星が生まれ続けている銀河が、それぞれどのくらいの数宇宙に存在していたのか を昔の時代に遡って調べることが重要になります。 今回の研究では、すばる望遠鏡の広視野近赤外線カメラ MOIRCS を使って 20 晩以上の時間をかけて撮像観測することによって、非常に暗い、遠方の質量の 小さな銀河まで検出することに成功しました(左図)。 その結果、110 億年前から 70 億年前の間に、星が生まれなくなった銀河の数が 10 倍近く増加したこと、特に大質量の銀河において星が生まれなくなった 銀河の割合が急速に増えたことが分かりました(右図)。 この時代は宇宙全体で急速に星が増えた時期であったことが知られていますが、 今回の観測結果は、この時代に質量がより大きくなった銀河ほど 新たに星が生まれなくなり、星の少子高齢化が始まったことを示唆しています。 なぜこのようなことが起こるかの解明には、今後のより詳細な観測が必要に なりそうです。




(左) MOIRCS による GOODS-North 領域 (おおぐま座の方向、7分角 x 15分角) の近赤外線画像 (JHKs の3バンドによる疑似カラー)。 (右) 各時代で、どれくらいの質量の銀河がどれくらいの個数密度で 存在していたかを銀河全体、 星が生まれなくなった銀河、活発に星が生まれている銀河についてそれぞれ調べた結果。 110 億年前から 70 億年前の間に、活発に星が生まれている銀河の数が3倍程度増えたのに比べて、 星が生まれなくなった銀河の数は 10 倍程度増加している。特に質量の大きな、1011 (= 1000 億) 太陽質量以上の銀河において、星が生まれなくなった銀河の割合が 急速に高くなっていったことが見てとれる。 (画像:国立天文台提供)