谷口教授が共同研究者として参加している COSMOS プロジェクトで得られた最新の研究成果が、
プレスリリースされました。
ほとんど銀河は、太陽系がある天の川銀河のように、
その中心に活動がおとなしい巨大ブラックホールを持っています。
その一方で、銀河の中心にある巨大ブラックホールが大量のガスや星を吸い込み、
莫大なエネルギーを放射している、活動銀河核を持つ銀河も存在しています。
この違いは何によってもたらされているのでしょうか?
これまで、銀河同士の合体によってブラックホールへの物質の供給が促進される、
という考えが有力な説でした。
今回の研究では、この仮説を検証するために、
140個の活動銀河核を持つ銀河と 1200個以上の活動銀河核を持たない銀河について、
ハッブル宇宙望遠鏡による可視光の高空間分解能イメージを用いて、
それらが銀河合体を経験しているかを調べました。
活動銀河核を持つ銀河は、X線観測衛星 XMM-Newton による X線観測に基づいて選びました。
また、銀河が銀河合体を経験しているか否かは、ハッブル宇宙望遠鏡による可視光の
高解像画像で調べました。その結果、次のことが分かりました。
1. 少なくとも過去80億年の間では、活動銀河核の活動と銀河合体との間に、有意な相関は見られない。
2. それゆえ、活動銀河核の活動は、他の現象によって引き起こされたと考えられる。
この研究は、およそ満月9個分にあたる、2平方度という広い領域に対して
X線観測衛星 XMM-Newton による X線観測と、
ハッブル宇宙望遠鏡による可視光の高空間分解能撮像観測を行った、
COSMOS プロジェクトによって、初めて実現可能になりました。
谷口教授のコメント
「銀河の合体が巨大ブラックホールの活動性に
影響を与えていることは確からしいのですが、
巨大ブラックホールへのガス供給がどのような
タイミングで起こっているかわからないということです。
あるいは、巨大ブラックホールの活動性は
ひょっとしたらガス供給とあまり関係していない
ことを示しているのかもしれません。
新年早々、巨大ブラックホールの新たな謎が見えてきました。
挑戦すべき研究テーマがまた一つ増えたと言えるでしょう」
巨大ブラックホールについては、 『クェーサーの謎』(谷口義明著、講談社ブルーバックス) で平易な解説を読むことができます。