(“すばる望遠鏡で見つけ、ハッブル宇宙望遠鏡で極める”を簡略化したもの)
この記者会見の内容に関する記事掲載の解禁日時は 3月24日午前4時(24日朝刊への掲載は可)です。
(1) 講演者氏名: | 谷口義明(愛媛大学宇宙進化研究センター) |
(2) 講演題目: | COSMOSプロジェクト: HST/ACS による赤方偏移5.7のLyα 輝線天体の形態 |
(3) 講演受付番号: | X0450a |
(4) 内容の要約: |
愛媛大学、東北大学、カリフォルニア工科大学などからなる研究チームは、すばる望遠鏡で発見した125億光年彼方にある80個の銀河をハッブル宇宙望遠鏡の高性能サーベイカメラで撮影し、17個の銀河はまだ4000光年程度の大きさ(直径)しかないことを明らかにした(図1)。これだけ多数の生まれたての銀河の詳細な形態をハッブル宇宙望遠鏡で系統的に調べたのは世界で初めてである。
今回観測された生まれたての銀河は、現在の銀河に比べて数十分の一の大きさしかない。これらの銀河はその後100億年以上の時間をかけて合体を繰り返し、現在観測されるような大きな銀河に成長してきたことを意味する。まさに理論的な研究で予想されている銀河形成の現場を捉えたと考えられる。
今回ハッブル宇宙望遠鏡のカメラで撮影されたのは、生まれたての銀河で星形成がさかんに行われている領域の姿である。80個中17個しか検出できなかったが、残り63個の銀河では星形成領域の光度がハッブル宇宙望遠鏡のカメラの検出限界より暗いため、観測できなかったと考えられる。すばる望遠鏡で検出した光の大部分は星の光ではなく、星に電離されたガスの放射(水素原子の放射するライマンα輝線)であることに注意されたい(図2)。
なお、本研究はハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラム『宇宙進化サーベイ(通称COSMOS)』プロジェクト(代表:N. Scoville [Caltech])による研究成果である。また、科学研究費・基盤研究A(17253001:代表=谷口義明)による支援を受けて行われている。
(5)尚、本研究成果に関する論文は準備中であり(Taniguchi, Y., et al.: ApJに投稿予定)、今回の発表以外に記者会見する予定はありません。
図1 - ハッブル宇宙望遠鏡の高性能サーベイカメラで撮影された125億光年彼方の銀河。天域はCOSMOSフィールド(ろくぶんぎ座の方向)。白丸印の中央付近に見えるのが該当する銀河。白丸印の直径は1秒角で、赤方偏移5.7で約2万光年のサイズに相当する。
図2 - 図1で示したハッブル宇宙望遠鏡の高性能サーベイカメラで撮影された125億光年彼方の銀河のうち3個について、すばる望遠鏡によって得られた電離ガスのイメージ(右)と比較したもの。図1と同じく、白丸印の直径は1秒角。ハッブル宇宙望遠鏡の高性能サーベイカメラの角分解能は0.05秒角。一方、地上望遠鏡では大気揺らぎの影響を受けるので、長時間積分するとおおむね1秒角の角分解能になる。即ち、ハッブル宇宙望遠鏡の高性能サーベイカメラの角分解能は地上望遠鏡のカメラに比べて約20倍高い。
URL http://cosmos.astro.caltech.edu/
今回の発表に関連するCOSMOSプロジェクトについての参考論文は以下の通り。
1.Scoville, N., et al. 2007, ApJS, 172, 1
“The Cosmic Evolution Survey (COSMOS): Overview”
(COSMOSプロジェクト概要)
2.Taniguchi, Y., et al. 2007, ApJS, 172, 9
“The Cosmic Evolution Survey (COSMOS): Subaru Observations of the HST COSMOS Field”
(COSMOSプロジェクトのすばる望遠鏡による観測の概要)
3.Murayama, T., et al. 2007, ApJS, 172, 523
“Lyα Emitters at Redshift 5.7 in the COSMOS Field”
(今回観測した125億光年彼方の生まれたての銀河のすばる望遠鏡による発見の論文。今回報告するハッブル宇宙望遠鏡の観測については触れていない)
尚、本研究成果に関する論文は準備中であり(Taniguchi, Y., et al.: ApJに投稿予定)、今回の発表以外に記者会見する予定はありません。
ApJはアメリカ天文学会の天体物理学雑誌 (The Astrophysical Journal)の略号。上記の3編の参考論文はApJ SupplementのCOSMOSプロジェクト特集号に掲載された論文である。
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